それは、小さな街の小さな恋。
プリンと草野球。
日中はまだ暑いものの、少しずつ秋を感じ始めた9月。
お父さんが地方の講演会へと行ってしまった今日、藪下診療所はお休みだ。
一番忙しい魔の10日が過ぎ、ひと段落着いたので今日は溜まってしまった家事を片付ける日にしよう。
そう決意して、始めた洗濯物はあっと言う間に干し終わってしまった。
やっぱり二人分だとそこまでないな。
天気もいいし次は、掃除でもしよう。
掃除機と、散らかっているだろう洗濯物に備えて洗濯物かごを持ち、お父さんの書斎へと向かう。
「うわあっ!」
書斎への扉を開くと、居るはずのない人物がそこに居て、思わず仰け反って驚いてしまった。
「なんで俊ちゃんがいるの?!」
そこに居たのは、プリン片手にお父さんの医学書を読み漁る俊ちゃん。