それは、小さな街の小さな恋。
いつからいるんだろう。全然気づかなかった。
声かけてくれれば良かったのに。そんな野良猫みたいに入られたら怖いよ。
「大二郎さんの医学書読みたくて。大二郎さんにはちゃんと許可取ってるぞ。」
「俊ちゃんちだっていっぱい本あるじゃん…。」
隣街にある俊ちゃんのアパートには何度か掃除を強要されて行ったことがあるが、立派な本棚に入りきらず積み上げるほどにたくさんあったはずだ。
「ていうか、それ私のプリン…。」
「ああ、冷蔵庫にあったから食った。」
いやいやいや。
さも当然みたいに言わないでよ。
このプリンは昨日、事務員の加代さんがくれた手作りプリンだ。
楽しみにしてたのに。
でも、知らない人が作ったものが苦手な俊ちゃんには黙っていてあげよう。
私って、優しいな。