それは、小さな街の小さな恋。
「おばあちゃん、居るー?」
返事がない。物音もしない。
買い物にでも行ってるのかな。初子ばあちゃん、80が近いのに元気だからな。
「おばあちゃんー?」
もう一度声を掛けるけど、やっぱり返事はない。
茄子は、台所にでも置いとこうかな。
そう思って靴を脱いだとき、違和感に気が付いた。
あれ?でも買い物に行ってるんなら、なんで玄関の鍵が開いてたんだろう。
用心深い初子ばあちゃんは、いままでこんなことしたことない。
なんだか不安になって来て早足で居間へと進む。
「初子ばあちゃん、居ないの?おばあちゃっ…?!」
手に持っていた秋なすは、床に落ちゴロゴロと音を立てて転がっていく。