それは、小さな街の小さな恋。
「初子ばあちゃんっ!?」
転がった秋なすは、床に横たわった初子ばあちゃんの足元にぶつかった。
「ねぇ!初子ばあちゃん、初子ばあちゃん!」
これだけ大きな声で呼んでも、ピクリともしない。
顔色は土色で歯をくいしばってお腹を押さえている。
今朝は、いつもと同じように笑顔で『いってらっしゃい。』って言ってくれたのに。
なんで、初子ばあちゃん。
真っ白になっていく頭の中で、さっき横切っていった黒猫のギロリとした黄金色の瞳が私を睨んでいた。