それは、小さな街の小さな恋。
「初子ばあちゃんは?」
「大腿ヘルニア、脱腸だよ。」
「脱腸?」
「ああ、腸の一部がはみ出して腸閉塞を起こしてたみたいだ。あと少しでも発見が遅かったら、命まで危ないところだった。」
命まで…。その言葉だけで、ゾッとする。
なんで、もっと早くに気づいてあげられなかったんだろう。
腸閉塞だなんて、ずっと痛みを我慢してたんだ。
「私、今朝も初子ばあちゃんに会ったのに全然気付けなかった…。」
「ばあちゃんは昔から、自分の痛みに疎いからな。どうってことないって我慢してたんだろう。」
そう言って片手で顔を覆ってしまった俊ちゃんも、きっと色々なことを後悔している。
「かの、お前がばあちゃん見つけてくれたんだってな。」
ありがとう、そう俊ちゃんが呟いたときにはもう俊ちゃんの広い胸の中へと飛び込んでいた。