それは、小さな街の小さな恋。
「かの。」
「…俊ちゃん、初子ばあちゃん大丈夫だよね?」
「ああ。手術もそう難しいものじゃないし、後遺症が残るような病気でもないからな。」
そう言いながら俊ちゃんは私の頭へと手を回し、またいつものようにポンポンと撫でてくれる。
俊ちゃんの体温を感じて、張り詰めていた糸が切れてしまった。
「初子ばあちゃんまでっ、いなく、なっちゃうかと思った…!」
撫でるのを止めた俊ちゃんの腕が、ぎゅっと自分の方へと抱き寄せる。
堰を切ったように流れ始めた涙は、止まることを知らない。
初子ばあちゃんの姿を見たとき、ちらついたのはお母さんの顔。
人の命は脆い。どんなに生きて欲しいと願っても、生きたいと願っても、神様の裁量次第で儚く散っていってしまう。