それは、小さな街の小さな恋。
「初子ばあちゃん、ごめんね。痛みに気づけなくて、ごめんっ。無理に笑わせてごめんねっ…。」
血管の浮き出た腕に刺さる点滴の針が痛々しくて、余計に涙を誘ってくる。
溢れ出そうな涙をなんとか堪えようとしていると、頭上から優しい声が降ってきた。
「ばあちゃん、大事に至らなくて良かったよ。」
俊ちゃんはそう言うと、初子ばあちゃんの手をぎゅっと握った。
そっと見上げた俊ちゃんの目にはうっすら涙が浮かんでいる。
そんな俊ちゃんの腕を、同じように私もぎゅっと掴んだ。
しばらくそうしていたが、初子ばあちゃんの手を離した俊ちゃんに促されICUを後にする。
「かの、ちょっといいか?」
病院の真っ白な廊下で、俊ちゃんが改まった雰囲気で口を開いた。