それは、小さな街の小さな恋。
「かの、悪いんだけど、」
「私一回帰るね。入院の準備してくる。」
「いいのか?」
「もちろん。当たり前でしょ?」
悪いな、と頭を掻く俊ちゃんに、病院が用意してくれた準備するものリストを渡された。
「ばあちゃんの保険証は、居間にある箪笥の上から2番目に入ってるから。あと、一緒に入れてあるお薬手帳も持ってきてくれ。」
「あ、保険証とお薬手帳は持ってきてるよ。あと軽い着替えも。」
「お前、すごいな。」
「へ?」
俊ちゃんが本当に驚いたように目を丸くするから、私も驚いてしまう。
「ちゃんと準備してくれてたんだな。」
「まあ、ほとんど無意識の行動だったけど。」
「あんなに取り乱しまくってたのにな。」
「あ、あれは、ちょっと不安だっただけだよ…!」
うん。情けないでしょう?
でもね、今からは私が俊ちゃんを支えるの。そう決めたんだ。
今まで支えてもらった分、今度は私が支えるってそう決めたの。