それは、小さな街の小さな恋。
お稲荷さんと豆ぱん。
「かのちゃん。今日も来てくれたの?」
初子ばあちゃんが倒れて、ちょうど今日で1週間。
日に日に元の朗らかな笑顔を取り戻し、見た所今日のお昼ご飯のお皿は空になっている。
「お!お昼ご飯完食だね。」
「やっとお粥じゃなくなったからね。それでも、少し物足りないくらいだよ。」
おお。よかった、よかった。食欲もすっかり元通り。
それどころか、数日の断食の影響で食欲旺盛になったくらいかも。
「じゃーん!そんな初子ばあちゃんに差し入れです。」
「わあ、ありがとう。美味しそうだね。」
「でしょう?お医者さんも『食べ過ぎない程度だったらいいです』って。」
お重の蓋をあけ、姿をあらわすのは黄金色に光るお稲荷さん。