それは、小さな街の小さな恋。
初子ばあちゃんが居なくなってしまった病室で、洗濯物の回収と持ってきた着替えの詰め替えをしていると、突然仕切りのカーテンががらりと開いた。
そこに立っていたのは、白衣姿の俊ちゃんだった。
「あれ、ばあちゃんは?」
「俊ちゃん、お疲れ様!今さっきリハビリに行ったところ。」
「あー、やっと昼休憩とれたからばあちゃんと飯食おうと思ったのに。 」
方をがくりと落とし、落胆する俊ちゃんの手には豆ぱん。
ああ、本当に楽しみにしてたんだろうな。残念。
「お稲荷さん、いる?」
「いる。」
お重一杯に作ってきたお稲荷さんはまだ、半分ほど残っていてどうしようかと思っていたところだ。
俊ちゃんに食べてもらえるなら助かる。