<BL>  お前は俺のものだ。~古賀凛side~
僕は、暫く一人にして欲しいと言って、
屋上に行き、ベンチに座った。


紗代が死んだなんて、信じられない。


でも、紗代に触れたあの感触は冷たくなっていた。


輝と慶には、どうやって伝えればいいんだ。

母親が亡くなったなんて、今は、辛いかも
知れないけど、直ぐに忘れてしまうのかな


大切な人を無くすのはもう耐えられない。


どうすれば、いいんだろう。

もう、分からない。



「凛……」


とても聞き覚えのある声がした。

僕の前から突然いなくなった人の声……。


今、この人に優しい言葉をかけられたら、
甘えてしまう。

目を会わせたくない、来ないで欲しい。


「凛、何でこんなところに」


弱ってる時に聞いたら、安心して、身を委ねてしまう。


「おい、凛、聞いてるのか」


そう言って、顔を覗きこまれた。


「凛、お前、泣いてるのか……」


「来ないで下さい!」


「あぁ、悪い」


「何で、こんな時に現れるんですか!
どうして、今なんですか」


会いたいと思っていた頃に会えなくて、
忘れられた頃にまた、会ってしまうんだ。


「凛、落ち着け」


そう言って、僕を抱き締めた。


あの時と変わらない。

声も匂いも温もりもあの時のままだ。


落ち着いてしまう、もう、忘れられたはずなのに……。


「凛、どうしたんだ」


子供を宥めるように優しく甘い声で僕に問いかけた。


あんな振り方をされたのに……、

消えたはずの火が威力をあげた。



どうすればいいんだ。


「凛……」


京介さんの声が甘く響く。


今……、今だけは、甘えても良いだろうか。


「凛、どうした」


「紗代が……、亡くなりました。

京介さんと別れた後、紗代に出会って、結婚して、会社に入って……、

今じゃあ、息子が二人いて、二児の父親
なんですよ、僕……。

でも、また、大切な人が目の前から消えてしまいました。

僕が愛する人は、目の前から消えてしまう」
 

僕は、京介さんから離れた。


「これ以上、甘えたらきっと、京介さんの
迷惑になるので、僕、いきますね」


立ち上がり、京介さんから去っていった。








それから、葬式も済ませた。

輝と慶は、亡くなったと理解は出来ないみたいだったが、もう、会えないとはわかったらしい。

二人ともどうしてと、泣くばかりだった。

僕は、謝ることしか出来なかった。


色んな人から、励まして貰ったけど、
また、心にポッカリと穴が空いた。


満たしてくれた人が居なくなってしまった。


これから、どうなっていくのか
不安だらけだった。



< 16 / 26 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop