ラプラムル


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今日は、しとしとと雨が降っている。

花を摘見に行くことは出来ないし、機織りをする気分ではないし、リーズパイはこの前のがまだ残っているしで、私は島の中心部の教会に行くことにした。


「セゼリアちゃんじゃないか。雨の中よう来たねぇ。中へお入り。」

小さな傘で教会まで行くと、司教様が中へ招き入れてくださった。

「また本を読みに来たのかね。」

「はい。少し調べたちことがあるのです。」

この島には私とサゼル以外に子供はいないし、そもそも人口が0に果てしなく近いので、学校や市役所、病院と言ったものは無い。

いくつかの家と教会があるだけだ。

だから私は教会の奥にある司教様の大きな図書室でよみかきを教えてもらい、本を読み、外国語や古語、歴史やちょっとした医術、薬草学までもを学んだ。

その他、本島の子供たちが学校を通して学んでいく慣習や道徳といったものは、この島の暖かな人々との交流を通じて育まれる。


だから不足はないわね。
小さなこの島にはじゅうぶん過ぎるくらいに大きな学ぶことが散りばめられているわ。

供段にお祈りを捧げて、司教様から図書室の鍵を受け取ると、私は奥に進んだ。

分厚くて重たい図書室の扉を押し開けて中に入ると革や紙が、入り交じったような本の匂いが立ち込める。


「ええと……ここら辺かしら。」

私はとくに仰々しい背表紙の本が立ち並ぶ棚で足を止めた。
ひとつひとつの本がキラキラと金塗りになった背表紙を輝かせている。

「一番新しいのは……これ、かしら。」

1冊の重たい本を選び、近くの書き物机まで持っていき、そっと置いた。

“ラプラムル王室”

最近気になってしかなたかったラプラムルの王室のことを調べる。


ラプラムルの王族史が書かれたこの本の初まりは、やはりあの有名な詩だった。



王鹿の鳴く声 どこまで響く

雪原に跳ねる 華狐の目

ラグゥと共に舞い降りん

血は繋ぐ

神のみぞ知る定めを

ルガフに籠めよ

グランの鳥を

すべてはラプラムルの流れに

託された



昔昔、ラプラムルという名の男が金の毛皮の王鹿と青い目の華狐とともに天から舞い降りたという。

この詩はつまりそういうことだ。

ラグゥは“神”のこと。
そしてルガフは王室の記録をとる書物。
グランは“歴史”という意味らしい。

ようするに、ラプラムルは神の元に生まれた国で、歴史を書物に書き記しなさい。
そういうことだ。

ただ、
“血は繋ぐ”や“神のみぞ知る定めを”といったフレーズは解釈がなされていない。

つまりラプラムルの始まりは、この詩のふんわりとした雰囲気のみでしか伝えられていない。


私はその分厚い本の一番最後の章を開く。

一番最近の出来事が記された部分だ。
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