ラプラムル


私は本を閉じた。



姫は処刑され王と妃はお嘆きになっている
ーこれ以上のことは無いのだろう。



やはり、次の代については何も決まっていないのね。
ラプラムル王室は初代王、あの天から降りたというラプラムルから1度も血が途切れてはいないという。

それゆえに神の力も途切れずに、国にあらせられるともいわれている。


となるとこのまま2人に再び子供が生まれることがなかったらどうなるのだろう。



人々は姫を刑に処したことを後悔しないのかしら。



ただ、頭に浮かんだのはその疑問だけ。

つまらない理由だと思う。
戦いの相手を表す色だから、殺される。
それが王の血を断絶させてまでやるべき事なのだろうか。




よくわからない。
けれどきっと、この本だけでは知り得ないたくさんの流れが絡まって、そう簡単な問題でも無いのだろう。


ただの庶民である私にはこれ以上知るのは無理みたいね。

少しがっかりして、ゆっくり本を閉じる。
元の棚に戻そうと立ち上がって本を持ち上げた時、

ヒラヒラと一枚の紙のようなものが落ちた

「あら。本に挟んであったのかしら。」

拾い上げてそれを見て、わたしは驚きに動きを止めた。


黒い髪で灰色の目の赤子の写真


おかしい…
生まれながらの罪人である姫には名前を付けることもその容貌を伝えることもされてないはずだ。

つまり、姫は処刑の前に名前は付いていないし、写真などあるはずが無い。


どうして、こんな島の教会にこのような写真があるのかしら。



けれど、私は気づかなかった。
その写真にはどこにもラプラムルの黒い姫だとは書かれていない。

長い歴史の中、同じような姿で生まれたからと処刑された人はもっといるはずだ。

なのに、その写真を一目見て、無意識にわかっていたのだ。
“ラプラムルの黒姫”だと。



< 12 / 28 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop