ラプラムル

その本にはその題名通り、ラプラムルの現代の社会について書いてあった。


けれど、きっとこれは役所の検閲を通った本ではない。
なるほど父はこんなものまで手に入ってしまうご身分なのか。


王室直属の役所の検閲を通らなければ本は出版できない。
どこの王国でも珍しいことではないだろう。そしてそういう検閲を通ることで、国にとって広まると不利益になるような情報は排除されるのも当たり前だ。

だが、この本には王室への反抗集団の一覧や各団体の掲げている方針、近いうちに予定してあるデモの日程などがそのままに記してあった。

「……そういえば手紙にもそういう集団のことが書いてあったな。」

たしか、姫の処刑が一番の過ちだ、というような事を言っている集団。


ページをめくり、王国への不安や不満がつらつらと書き並べてあるような本を読み進める。


……あった。これ…か?


“ルファリナ”
そういう名前の集団だった。
姫処刑を滅亡する国家の元凶だと定義する。

ルファリナについて書かれてある数ページを読み、納得した。

つまるところ、敵国ヴァイアライムとの戦争を反対する、反戦集団だ。
けれど“反戦”という国家に真っ向から刃向かう方針を掲げていては絶対に弾圧に遭い、集団の維持さえままならない。

だからヴァイアライムの象徴の色を持つと言って処刑された姫を名目上、利用して活動しているわけだ。



そういえば、何年前にどういう理由でヴァイアライムとの戦争が始まったのかなんて知らない。
敵国のヴァイアライムは凶悪な国だから、戦争をする。
小さい子はそう教わる。
そもそも激しい戦争ではない。戦地では互いの国がつかず離れずの位置を保って睨み合っている、そう言った方が正しい程に冷戦的要素を持つ争いだ。

戦士になるよう召集されるのは男で、32歳と35歳の2年のみだ。
10代の頃は勉学に励み、20代は家庭づくりをする。そして家庭が安定してきた頃に1年戦地へ赴く。
その程度の戦争だ。

けれど、始まった当初はとても激しく、白熱した戦いが続いていたらしい。

何人ものラプラムル国民が人質に取られ、拷問を受け、骨だけになって帰ってきたこともあったそうだ。


だからその時の国王によって、黒髪や灰眼を持つもの・敵国の味方するものは反逆者として厳しく罰する、という法が制定された。


そして、ラプラムルの国民がヴァイアライムを忌み嫌うのは白熱していた当時の嫌悪が言い伝えられてきて、それを鵜呑みにしているようなものだった。

ちょうど「ヴァイアライムは最悪だと教わったから嫌いだ」とか「みんな敵視しているから私たちの敵だ」とか
そういう類に近しいのかもしれない。


いわゆる伝統化した憎しみは、今でもなお形を保っている……






ルファリナに関してのページより後ろには、執筆者や発行された日付が書き並べてありそれ以上の情報はなかった。
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