ラプラムル

家について、摘んできたリーズの実を冷たい水で洗い、リーズパイ作りに入った。


そのまま食べてもじゅうぶんだれけど、パイにすれば甘さもほどよい酸味も増して美味しくなる。


サゼルもおばあさまも喜んで食べてくれるわ。


「よし、今の時期のリーズなら、とってもおいしくなるわね!」


ナツハのシロップが入った瓶の蓋を開けると、甘くて豊かな花の香りが漂った。

春の、ほんの一時にしか取れないナツハの花の蜜は、数滴だけで香りや甘み、舌触りや深みまでをももたらす。
まるで魔法のようで、大切に用いられるこの島の貴重な特産品だ。


作り進めていくにつれて、美味しそうな匂いが立ち上る。

「あぁ、いい匂いだねぇ。」

「おばあさま、お庭仕事はおしまい?」

「ふふ。家の中からあまりにもいい匂いがするから、つい、ね。」

「成功みたいでよかった!もうすぐで焼けるわ。」

「セゼリアは本当にリーズパイを焼くのがうまいねぇ。」


そうかしら、と笑いながら答える。

喜んでもらえそうで嬉しいわ。



けれど、私は心の中でずっとぼんやりとほかのことを考えていた。

さっきのラプラムル本島の煙。

サゼルやほかの島の人は珍しがって眺めるけれど、私は何かもっと深い意味を持つ何かがあるように、どこかうっすら感じていた。

ラプラムルの王様とお后様とが、なんだかとても気になる。



娘思いの人だ。

不条理な刑で失った娘を愛してる。



よくわからないけどあの追悼のための煙はそうやって私に語りかけていた。

ふわふわと風に翻弄されながらも。
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