この桜を見て、君は何を想う
「え、亮くんって…神楽亮くん?」


神楽…亮……?


「すみません、私名字も知らなくて。
名前しか分からないんです…」




するとお姉さんは、暖かい笑顔で


「亮くんのお友達?」

と聞いた。



「え?」


なんのことか分からずに私が聞き返すと、お姉さんは少し曇った顔をして立ち上がった。



「この廊下を真っ直ぐ歩いて曲がったところに、0125室があるから。多分、今日は熱もあったから部屋にいると思うわ」



お姉さんは私を、これ以上聞くなという目で見る。



わたしもそれに従うように、会釈をして車椅子を走らせた。


薄暗い廊下に、私の息遣いだけが響く。
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