この桜を見て、君は何を想う
車椅子が音も立てずに廊下を走る。


彼に会うための情報は、

『亮』というか名前くらいしかなくて。


無力な私は、受付へと向かった。







「すみ、ません」



思ったよりも受付のカウンターが高くて、車椅子のままじゃ顔も見えない。


手を無理やり伸ばして、カウンターの端をコンコン叩いた。


椅子の脚が、地面に擦れる音が聞こえる。


「はーい」


私が車椅子に乗っていると悟ったのか、カウンターにいたであろうお姉さんが私の隣に来てくれた。



「どうしましたか?」


お姉さんが私の顔を覗き込む。



「あの…」


「はい?」



「人を探してて……
亮くんっていう男の子なんですけど…」
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