あの頃のように笑いあえたら
式も終わり、それぞれの教室へと入る。B組には、中学からの仲間も何人かいたから、それほど不安はなかった。

担任の岡本先生も、優しそうなおばちゃん先生だ。

一通り自己紹介をすませると先生が言った。

「えー……ではさっそく、学級委員を決めたいと思います」

緊張の自己紹介を終えた生徒は、みんな気を抜いていたようで一気に教室がざわめき立つ。

せっかく私の緊張も溶けてきたのに。

「ヤバイ!先生と目があった」

隣りに座る小柄な女子が私に向かって言う。

「ふふ、そりゃヤバいかも」

目を合わせて笑いあう。

ー ー いい子そうだな……。

人見知りの私には、こんな風に声を掛けてもらえると嬉しかったりする。

そして、初対面の私にも臆することなく話しかけられる彼女が羨ましい。

「えーまず委員長、男女各一人〜、立候補いませんか?」

ー ー いるわけない

「最初だから、仕方ないか……」

先生はそう言って名簿に目を落とす。

どうやら、名簿から指名するつもりだ。
イヤな空気が教室中に流れる。

「じゃ、女子は出席番号1番、雨宮 愛㮈。男子は……出席番号最後の芳川 源、委員長でお願いします。」

ーー はいっ?

ずり落ちる眼鏡を2回ほど定位置に戻す。

ーー はい……⁈

「え……?私?」

ーー 無理無理!無理だよ‼︎
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