あの頃のように笑いあえたら
雨宮という名前が憎い。

「とりあえず、前期だけだから、お願いしますね。」

にこりと笑う先生の顔が、鬼に見える。

私が……委員長。

緊張で胸が震える中で、芳川くんか……そういえば代表の挨拶の子だな、なんて考えている。

「さ、さっそく2人前に出て。副委員長を決めて下さい」

人前に出るのが苦手な私には、高校生活しょっぱなから、罰ゲームのようだ。

どうしよう、痛いくらいの心臓の鼓動が全身に伝わる。

「ちぇ。ついてねー」

先に芳川くんが立ち上がり前に出て来たので私も覚悟を決めるしかなかった。

仕方なく席を立ち、明後日の方向を向いている芳川くんの横に立つ。

「……」
「……」

しんとした空気が教室と、私の心を冷たくしている。

ああ、もうすでに心が折れそうだ。

みんなの目が、私は委員なんてやりたくないと語っている。

そりゃそうだよね、私だってやりたくない。

「ちょっと。何か言ってよ」

私はそんな空気に耐えられなくなり、思った以上に長身の芳川くんに耳打ちする。

あんなにしっかりした挨拶ができるんだ。きっと頼りになるだろう。

「は?おまえが言えよ」

おい⁈ まさかの丸投げとは!

「…えーと。副委員長を…男女各2名決めます。副委員長は、それぞれ体育委員と音楽委員も兼任してもらいます。」

なんで私が……

「…誰か、立候補は…?」

いるわけ、ない。
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