あの頃のように笑いあえたら
「うん。ていうか源クン、知らなかったの?」

カンナ……?

咄嗟にドアをらノックする手を引っ込めていた。

中からは、また源の声が聞こえてくる。

そうか……そうだよね。

学校じゃ、あまり女子と話しをしない源。
そりゃ一緒にいたら話しくらい、するよね。

ーーズキン、と胸が痛む。

何もない顔をして中に入ればいいんだ、そんなことは分かっている。

きっと、他愛ない話しをしてるだけだ。

私だって話の仲間に入れてくれるだろう。

ーーでも……。

臆病な足は勝手にドアとは反対方向に動いていた。

とは言っても休憩中にいる場所なんて、他にはなかった。

仕方なく、外に出る。

見慣れた高いビルの間を抜け、静かな通りにでる。

都会は嫌いだ。
人混みは苦手だし、誰もが余裕のない顔をしている。

でも、今の私にも余裕なんてないかもしれない。

あてもなく人混みの中を歩き始める。
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