あの頃のように笑いあえたら
その日の帰り道。部活のあるみんなと別れ1人で門を出る。

同じ帰宅部の源と一緒になると思っていたのに、どこにもその姿はない。

仕方なく駅へ向かって歩く。

「愛㮈!」

不意に後ろから呼ばれ、声の主が源ではないことはすぐに分かったが、ちょっとだけ期待して振り向く。

やはりそこには、源ではない別の男子の姿。

「ああ、今帰り?」

隣りのクラスの……えっと、小橋くんだっけな。

前にノートに挟んで連絡先をくれた子だった。

「うん、駅まで一緒にいい?」
「うん」

聞いてくれるあたり、悪い子ではなさそうなんだけどな。

「夏休みも仕事?」
「うん、そう」

共通点がまるでないから、話題もない。

そりゃそうだよね、ただの同級生だもんな。

彼が私に興味を持ってくれなければ、きっと話すこともなかっただろう。

2人の靴音が、妙に大きく聞こえる。

「夏休みの課題見た?多くね?」
「あは、見た見た!あれ、ヤバイよね」

「うん。ヤバイな」
「………」

ちょっとした沈黙も、あまり知らな相手ではちょっとツライ。

小橋くんには申し訳ないけど、早く駅に着いたらいいのに……そんなことを思ってしまう。
< 127 / 231 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop