あの頃のように笑いあえたら
「ゾクチューのヤツやれよー!」

どこかの男子の声が響く。

おそらく、附属中出身者は受験をしてないので楽してるんだから、おまえらやれよ、的な。

「……えーと、でも」

私の気弱な声はすぐにかき消されてしまう。

「そうだ、そうだ!ゾクチューに任せたらいいよ」

自分を守るための声が、あちこちから聞こえてくる。

でも、それじゃ……。

奥歯を噛み締めると、自分の気持ちが一点に集まって熱くなる。

「……でもっ!芳川くんが附属じゃないので、それは不公平だよ!だから、みんなでちゃんと決めよう!」

思った以上に大きな声に、静まり返った教室中の目が、芳川くんが私を捉えている。


ー ードクドク

心臓の音がうるさい。

いやだ、どうしよう。マズイこと言っちゃったかな。

みんなの反応が怖い。

「……そりゃ、そうだな」

……え?

またどこかの男子の声を合図に、みんながざわつき始める。

「しゃーねー、オレやるよ!体育委員」

するとそう言って、一人の大柄な男子生徒が立ち上がる。

「あ、ありがとう!」

「あ、じゃあ私、音楽やるよ」

さっき私に話しかけてくれた、小柄な女子だ。

委員、嫌だって言ってたのに。

心臓が、さっきとは違う音を立てる。

「あ、うん!ありがとう。よろしく!」

よかった、みんな分かってくれて。
< 13 / 231 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop