あの頃のように笑いあえたら
「で、先輩の彼女って?」

2人は話しの途中だったようだ。

「ん。なんか中学の同級生らしいよ。同窓会で再会して……」

「そっか。ありそうな話しだね」

恋に落ちる瞬間は、どこにでもあるってことだ。

「何気なくね、先輩がカバンに新しいキーホルダー付けてたから、可愛いですねって言ったら……」

その場面を思い出したのか、咲苗の目に涙が溜まってきていた。

でも、必死で堪えているのが分かる。

「うんうん。大丈夫だよ、泣け泣け!」

真子がそう言って咲苗の肩に手をあてる。

恋に落ちる瞬間もあれば、恋が終わる瞬間もあるんだ。

「……っく、彼女……と、お揃っいだっ…って、っく」

「そっか……」

何も言えなかった。

泣いている咲苗の気持ちは、痛いほど分かる。

しばらく2人で震える肩や背中を撫でる。

早くあの可愛いエクボが見たい、ただそれだけだった。
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