あの頃のように笑いあえたら
今は屋台の要、看板の色塗りをしているところだ。

ベニヤ板に書かれた下書きにそって色付けをしていく。

「へぇ……うまいもんだな」

廊下いっぱいに広げられた板をよけながら、隣りのクラスの小橋くんが声をかけてきた。

「でしょ、さすが美術部!」

自分が描いたワケではないが、ついドヤ顔になる。

「はは、うん。あ、これやるよ」
「え……?ああ、ありがとう」

ポン、と私の膝に飴の袋を置いて自分の教室へと向かって行った。

その背中を見送っていると、廊下の先で作業をしている源と目が合った。

ーードキン。

最近なかなか2人になれる機会がない。

ゆっくり話をしたいけれど、源を誘う理由も勇気もない。

ほどなくそらされた視線を気にしながらも、作業に戻る。

ーー気のせい、かな。

避けられているわけではないけれど、ちょっとしたタイミングが以前とは少し違うような。

重なった視線をそらすスピードとか、挨拶で立ち止まる秒数、とか。

感じ方の問題なのかもしれないけど。

何かを、意識しているような。

今の私には、気にして悩む余裕はないけれど。
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