あの頃のように笑いあえたら
「カンナちゃん、もう少しうるちゃんに寄って」

私より少し背の低いカンナが動くたびに、甘い香りがする。

いつも右に持っているカバンを、左で持つだけで、かなりの違和感を感じる。
肩が凝りそうだ。

「うるちゃん、やっぱりカバン中央で両手で持ってみよう」

松岡さんの言葉で、カバンが正面を向くように持ち変える。

やっぱり、私の持ち方変だったかな……。

いちいち小さいことが気になってしまう。

「はーい、じゃ笑顔で〜!」

ーー カシャカシャ

シャッター音が響く。

文化祭を明後日に控えた木曜日。

源は準備に備えてバイトは休みにしていると言っていた。

私も明日は休みをもらっている。

みんな今ごろ必死で作業をしているだろう。

もちろん源も。

隣りでカメラを見つめるカンナを、源はどう思っているんだろう。

こんなことばかり気にしてしまう自分かイヤになる。

「はーい、オッケー!お疲れ様、休憩入って〜!」

「お疲れ様でしたぁ」

カンナと2人、控室へと向かう。
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