あの頃のように笑いあえたら
「どしたの?」

カンナは食べていたパンをテーブルに置いて、意外にも笑顔を見せた。

「源くんのこと、いいなって思ったのは事実だけど。なんて言うのかな……結局少し仲良くなっても、源くんのことよく分からなくって」

「……うん」

それはきっと、源が心を開いていないからだ。彼の周りには、そう感じてる人はたくさんいるだろう。

「うまく言えないけど。もどかしいっていうか。想像してたのと違くて。私きっと、もっと素直で分かりやすい人が好きなんだなって分かったの」

そう続けるカンナはきっと素直なんだな……と思う。

「もっと時間かければ分かるのかもしれないけどね。好きな人がいるなら、これ以上踏み込むのも迷惑だろうし」

カンナは案外、源のことを分かっているのかもしれない。

源が、自分のことをどんな風に思っているかも。

「そっか。」

「ん。まだホンキで好きになる前に言ってもらってよかったよ」

「うん」

ホンキで好き、かぁ。

でも、源の良さを少しでも分かってくれたなら私も嬉しい。

カンナにはきっと、勝みたいに分かりやすい人が合ってるんだろうな。
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