あの頃のように笑いあえたら
中学の時から合唱部だったという咲苗の姿はさすが、なかなかのものだった。

小柄な体いっぱい使って、自らを楽器とし堂々と前を見据え歌う。

咲苗は、あの失恋を乗り越えてより強くなった気がする。

あれから、例の先輩とも変わらず仲の良い関係を築けているみたいだし。
そりゃあ、咲苗の心の中はフクザツだろうけど。部活内でギクシャクするよりはマシだろう。

うちの合唱部は、コンクールの県大会にも出場する実力だ。

男子の部員もけっこう多いし、たくさんのお客さんの数も納得がいく。

男子の力強い歌声と、女子の透き通るような声のハーモニーに、素直に聴き入っていた。

ーーなんか、いいな。

きっと一生懸命練習したんだろう。

部活って楽しそうだな。

みんなが部活の話や合宿の話しをしているのを見ると、時々羨ましく思ったりする。

もちろん、私がモデルの仕事を選んだのだから後悔はないけど。

違う選択肢を選んでいたら、今の私はどんな学校生活を送っていたのだろう。

真子は笑う。
どっちだって変わらないよ、と。

そんなことを真子と話しながら我がB組みの焼き鳥屋台へと戻る。
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