あの頃のように笑いあえたら
「ありがとうございました〜!」

作り笑いは、お手の物だ。

ーーケホッ ケホケホッ

ヤバいな……咳が酷くなってきた。

胸の音も、少し良くないのが分かる。

時計を見るとあと1時間、店番の時間は残っている。

「愛㮈大丈夫?煙吸っちゃった?」
「ん?うん。大丈夫」

店番が終わったら、吸入して少し休もう。
みんなに迷惑がかからないように。

「焼き鳥いかがですか〜?」

少しお客さんが途切れた時

「……とな、いとな!」

屋台の外から源が私を手招きしている。

やっと会えた、そんな思いで源のそばへと向かう。

「なに?どうしたの?」

源の姿を見て胸の奥は暖かくなっているけれど、平常心を装う。

「おまえ、大丈夫か?喘息出てんだろ」

いつもより少し小さな声、珍しく険しい顔にドキっとさせられる。

「え……?うん。でも大丈夫」

なんで分かったんだろ……?


「ばか、無理すんなよ。保健室で少し休め」

「でも、店番が」

源の優しさは嬉しいけれど、みんなには迷惑かけたくない。

「店番は俺が代わるから、ほら行くぞ」

源は真子に、いとな借りるな、と言って私の腕を引いて歩き始めた。
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