あの頃のように笑いあえたら
「……もし、帰るなら送って行きますよ」

「ああ、うん。でも、寝られてるってことはマシになってると思うわよ」

「そうですか、よかった」

遠くで源の声が静かに響く。

いつまででも聞いていたい、柔らかく優しい声。

目を開けると、保健室の白い天井が目に入る。

いつの間にか寝てしまっていたようだ。
ゆっくりと起き上がって深呼吸をする。

呼吸はだいぶラクになっていた。

ーーよかった

そっとカーテンを開けると、すぐに源と目が合う。

「あ、ごめん。目覚めちゃった?」

先生だけが近寄って来て胸の音を聞いてくれる。

「……うん、よかった。マシになってるね。ちょっとラクになったでしょう?」

「はい」

後夜祭、出られる……?

「よかったわね。芳川くんが早めに連れて来てくれたから」

「あ、はい。ありがとね、源」

「いや……」

いつになく照れた表情。


「後夜祭、出られますか?」

「ん〜。大丈夫だと思うけど……まだちょっと時間あるからそれまでは無理しないこと、いい?」

よかった!

「はい、ゆっくりしときます」
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