あの頃のように笑いあえたら
「ありがとうございました」

「はい、気を付けて楽しんでらっしゃい!」

先生に見送られ、2人で保健室を出る。
源には迷惑かけちゃったな。

「源、店番ごめんね」

「え?ああ、別にいいよ」

見たかったのとかあったんじゃないのかな……?
源に迷惑をかけてしまうなんて、これ以上の不本意はない。

「私、後夜祭までどこかの空き教室にいるからさ、源どっか回ってきなよ」

ーーほんとは、2人でいたい。

空き教室でも、屋台でも、写真部でも…どこだっていい。

飲み込んだ言葉は、チクチクと心に刺さる。

「……じゃ、オレも一緒に行くよ」
「……え?」

えっ?今一緒にって言った?

「もう、だいたい見たし。賑やかなの苦手だし。あ、いとながいいなら、だけど」

ももももちろん、いいですよ。

いいに決まってる。

「うん、いいよ。じゃそうしよう」

2人で、上の階の空き教室へと向かう。

心のチクチクは、一瞬にしてまあるい暖かな物に。
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