あの頃のように笑いあえたら
「おまえさ、オレとこんな所にいていいのかよ?」

源は上下するボールを見つめたままだ。

いつもと同じトーンの声にホッとする。

「え?なんで?」

私は、源と一緒にいたいんだけど。

「あいつは?隣りのクラスの野球部のヤツ、なんか最近いい感じじゃん」

は……?まさか、小橋くんのこと?

「いい感じ?やめてよ」

やだ、そんな風に思われてたなんて。

「え?なんもないの?」

「もちろん、なんもないよ」

あるわけないじゃん。私が好きなのは目の前の、君なんだよ。

「なんだ、なんか気使ってたよ」

「なんでよ?」

なんで源があいつに気使うのよ?

源のリフティングはまだ続いている。

まるでボールが足に吸い付いているようだ。

なんか、私にも簡単に出来そうな気がしてきた……いや、気のせいだな。
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