あの頃のように笑いあえたら
「じゃ、いいや。なんだ、そうか」

源は笑うと目が細くなる。

気にしてくれてたのは嬉しいけど……そうか、そうだ。

最近源が、少し目をそらすタイミングが早いのも、どこか少しだけよそよそしかったのも、そのせいだ。

「……あはは」

なんだ、なんだ、そうだったのか。

「なんで笑うんだよ〜!」

照れた源は、ボールを軽く私に投げる。

それを受け取ると、パシッといい音がした。

源が大好きなサッカー

これからは、サッカーを楽しんでる源をもっと見られたらいいな。

「源だって、カンナと仲良しじゃん」

ボールも、言葉も源にお返しする。

「は?仲良しじゃねーし!」

ボールを受け取り、また照れた顔。

「カンナ、あんなに可愛いのに?」

「だから、顔で選ばないって言ったろ?」

じゃあ、源の好きな子は誰?
そう聞きたかった。

でもやっぱり、怖くて聞けない。

「ふふ、そっか」

ボールを元の位置に戻し、源が振り向く。

「さ、時間だ、行くぞ。具合どうだ?」

「ん、大丈夫」

私は満面の笑みで源を見つめる。

源との時間は、他のなによりも私の元気になる。
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