あの頃のように笑いあえたら
夕暮れの観覧車は思っていたより空いていた。

真子と英介は当然のように2人でゴンドラに乗り込んで行った。

私に目配せしていた咲苗は、自然に勝と2人で。
こういうことは本当にうまいんだよな、咲苗は。

そして私と、源。

寒そうに紺色のダッフルコートのポケットに手を入れている源。

「寒いね、大丈夫?」
「うん、平気だよ」

向かい合って座るゴンドラ。

高い所は怖くないと言っていた源は、落ち着いているように見える。

「楽しかったね」

外の景色を眺めながら呟く。

「うん、ジェットコースターなんて久しぶりに乗ったよ」

「あはは!」

あの引きつった源の表情を思い出す。

源の周りは、いつも時間がゆっくり流れているようで本当に心地よい。

私は源と2人になれて嬉しいけど、源はどうなんだろう。

その表情からは何も伺えない。
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