あの頃のように笑いあえたら
駅に着くと、雨で帰宅を急ぐ人で混みあっていた。

間も無くホームに滑り込んできた、雨に濡れた電車に乗り込む。

3人並んでつり革につかまる。
源は私を家まで送ると言ってくれたけど、遠回りになるから、と断わった。

以前に比べ積極的な源に少し戸惑ってしまう。

「じゃ、オレが送ってやろうか?」

2人のやり取りを黙って聞いていた勝が私の顔を覗き込む。

「いや……意味分かんない」

「あはは、やっぱり?」

源と一緒にいられるのは嬉しいけれど、今日はちょっと1人になりたかったし、甘えてばかりの自分もイヤになっていた。

頭で考えて、どうにかなる事じゃないのは分かっているけど。

「じゃあね!」

先に電車を降りた2人に別れを告げ、1人吊革を握りフゥと深くため息をつく。

さっきまで隣にいた2人の空間が、寂しく感じられる。

1人になりたい、なんて思ったくせに……なんだかな。
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