あの頃のように笑いあえたら
10分ほど一人電車に揺られ、家に着く頃には青空が広がっていた。
なんか、変な天気だな。

いつものように、ただいま、とドアを開ける。

誰もいないリビング。

そうか、ママは今日遅くなるって言ってたっけ。

源のことを話したかったけど、仕方ないな。

テーブルには、私の大好きなチキン南蛮が用意されている。
仕事で忙しくても、いつもごはんだけはきちんと準備してくれているママ。

まだお腹は空いてなかったので、とりあえず自分のベッドに横になる。

疲れたワケでも眠たいワケでもなかったが、柔らかい布団を抱くと気持ちが落ち着いた。

ベッドの脇に置いてある、おばあちゃんが残してくれていた幼い私と源の写真を眺める。

何の不安もない、笑顔の2人。

確かにこの写真を見た時、源に似てると思ったけど……まさか。

あの、私が発作を起こした日以外のことは思い出せない。

きっと、2人とも楽しくすごしていたのだろう。

この時から10年、私にも源にも笑えない日々があった。

この頃のように、また2人で笑いあえたらどんなにいいだろう。
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