あの頃のように笑いあえたら
私と源の間に何の進展もないまま12月に入り、長野のおばさんが雪が積もり始めたと電話で話していた。

冬休みはすぐそこだ。

冬は嫌いじゃない。
澄んだ空と空気。

冷たい朝、布団から出るのは億劫だけど。

「おはよ〜」

駅のホームで乗り換えの電車を待つ朝。
珍しく英介と同じ電車になった。

「おはよう、寒いね」

お気に入りのマフラーを鼻まで持ち上げる。

「あのさ……源がサッカー部入るかもって聞いてる?」

少し聞きにくそうに英介が言う。

そっか……英介には話してるんだな。

「ああ、うん。聞いてるよ」

「そっか。理由も?」
「うん……」

オレも、と言って英介は電車の来る方向を眺める。
そこは長いトンネルのように、ただ電車を待つ線路が続いているだけだった。

「オレさ、ずっと何も考えずに源にサッカー部入れって言ってて……なんか悪かったなって思ってさ」

「それは、知らなかったんだし、しょうがないよ。源はそんなこと気にしないよ」

大丈夫。私の知ってる源はそんなに心が狭くないよ。

その時、いつも通り正確な時間に電車がホームに入って来た。
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