あの頃のように笑いあえたら
「うるちゃん、もう少し左向いて」

もう春物の撮影に入っていた。

柔らかな肌触りのワンピースに、カーディガン。

春らしい色に、少し気分も上がる。

「はーい、笑顔〜!」

私に向かってそう言っている松岡さんが、1番いい笑顔だ。なんだか可笑しくなり、私も自然と笑顔が溢れる。

その笑顔の隣、作業をしている源の後ろ姿。

撮影のために少し高めの暖房が付けられているスタジオ内、あのライトブルーのシャツ一枚だ。

「はーい、オッケー!」

撮り終えた写真をチェックする。

松岡さんが撮る写真は、とても色が正確だ。

「うるちゃん、なんか表情が柔らかくなったよね」

「え?そうですか?」

自分で見ても、よく分からない。

「うん。もしかして恋とか?」
「ふふ……さあ?」

なんでかな?恋をしてるのは事実だけど、心の余裕なんて全くないのに。
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