あの頃のように笑いあえたら
「へぇ、どんなとこ?」

風景写真も撮る松岡さんは、源の被写体が気になるようだ。

「ん〜僕もあんまり覚えてないんですけど……父方のばあちゃん家の裏の森とか。池があったかな」

ーーおばあちゃん家の裏の森……池……。

源は、松岡さんと話しているのに、私に向けら
れた言葉のように感じた。

ただのうぬぼれかな。

ーーあの森だ。

2人で行った、あの思い出の場所だ。

「撮った写真、ちゃんと見せろよ」

「え……?」

「あ!私も見たい見たーい!」

大森さんの大きな声が頭の中を通過する。

「うまく撮れたら」

源の少し自信なさ気な言葉も。

あの森に、源は行こうとしている。

ーー なんで?

ただ、思い出の地の写真を撮りたい、そう思ってるだけ?

黙々と、お弁当を口に運ぶ源からは気持ちは読み取れない。

「あ、いとな。明日世界史のノート貸して」

不意に言われ、心臓がトクンと鳴った。

「うん、いいよ。まさか寝てた?」

「はは、うん。」

ーー素直だな。
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