あの頃のように笑いあえたら
源は撮影現場でも私を『いとな』と呼ぶ。

たぶん『うる』と呼ぶのは照れ臭いからだと思うけど。

そのおかげもあってか、私は最近『愛㮈』と『うる』のギャップをあまり感じなくなっていた。

私の表情が以前より柔らかくなったのは、もしかしたらそのせいかもしれない。

無理することはない。どちらの私も、私なんだ。そう教えてくれたのも源だった。

ーー 源があの森へ行くーー

それを、私に伝えたのには何か意味があるんじゃないか。

2人の思い出として、あの森で私とその話をしたい、そう思っているんじゃないか。

それとも、私が気づいているかどうか試したのかもしれない。

ーーああ、もう、もどかしいったら。

……でもきっと、源も私と同じ。

確かめるのが、ちょっと怖いんじゃないかな。

私がどう思っているのか、源も分からないんだ。
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