あの頃のように笑いあえたら
控え室へ続く廊下へ出ると、スタジオの熱気も遮断されひんやりとする。

まだ季節は冬だと気づく。

控え室へ入り、バッチリメイクを落とす。

『うる』から『愛㮈』へ。

以前みたいに変身の儀式、とまでは思わないけれど、不思議と心まで落ち着いてくる。

ーー私は、源と話がしたい。
源の気持ちを、確かめたい。

そして……私の気持ちも伝えたい。

ーー 私も、あの森へ行こう。

源に会えるか分からないけど、それでもかまわない。

思い出の中だけの森じゃなく、実際に行って身を委ねればきっと何かが分かる、何かが変わる。

じっとしてなんか、いられなかった。

メイクを落とし終わり、愛㮈へ。

2つの私を受け止めてくれた源。
今度は私が源を受け止めに行こう。

コートを羽織り、冷たい風の吹く外へ出る。

吸い込んだ空気が、全身を駆け巡り胸を熱くする。
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