あの頃のように笑いあえたら
「おー、いいよ。オッケー!」

松岡さんのこの言葉を聞くとホッとする。

思っていたより、早く終わってよかった。長引くと身体にひびいてしまう。

「はーい、お疲れ様でーす」

作り笑顔での挨拶はもうお手の物だ。

パーカーを羽織り、撮ったばかりの写真をチェックする。

「ね、この表情、いいでしょ?」

松岡さんが指差す画面には、空を眩しそうに見上げる私が映る。

「…ですか? …ケホッ」

正直、分からないので、適当に答える。


寒いな…早く、ロケバスに戻りたいな。

ーー その時

フワリ、と誰かがブランケットを私の肩にかけてくれた。

ーー ⁈

見上げると、それは源だった。

「…あ、ありがとう」

ドキッ!

源はなにも言わず、チラリとだけ私を見てすぐに行ってしまった。

胸がトクン、と鳴ったのはバレると思ったから?

それともブランケットを掛ける手から優しさが伝わってきたから……?
< 27 / 231 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop