あの頃のように笑いあえたら
控え室へと戻り、パッツン前髪のウィッグを慣れた手つきで外す。

そしてナチュラルに見えるバッチリメークを落とし始める。

モデル 『うる』から平凡な15歳の『いとな』へと戻る儀式だ。

容姿や体型はともかく、派手な性格ではない私は、モデルには向いていないと思う。

小さい頃は、持病の喘息が酷く入退院を繰り返していた私。

退院して、長野のおばあちゃんの家で静養する、そんなことを繰り返していたから幼稚園にはほとんど通えていない。

やっと喘息が落ち着き学校に通う頃には、なかなか周りの友達と馴染めずに苦労した記憶がある。

私は人付き合いがニガテ、そんなレッテルを自分で貼り付けてしまっていた。

今でもそれが、私の大きなコンプレックスとなってしまっている。

そんな私が今、世間一般では華やかと思われているモデルの世界に携わっているのは、やっぱりパパの死が大きい。
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