あの頃のように笑いあえたら
「ほら、手動かせよ」

源がまた私を見る、そのたびに私は源の澄んだ瞳に吸い込まれそうになる。

「あ、うん」
カサッ パチン。

またシンとしてしまった部屋に響く。

まさか……まさか気づかれてたなんて

しかも、気づかないフリしようとか、私が無理してる、とか。

普段は、他人のことになんて全く興味なさそうなのに。

ちゃんと見ていなかったのは、私の方だった。

ー ー私は、源を分かっていなかった。

次の質問は、なんで隠してるんだ?かな。

「でもさ、なんでおまえがモデル?」

え、あ、そっち?

「大森さんに、スカウトされて……」

「まあ、それは分かるけど、なんでやろうと思った?」

源の目はプリントに置かれたままだ。

地味な私と、モデルの仕事が結びつかないのは無理もない。

なんだ、普通に知りたいって思ってるんだ。クールなんかじゃないじゃん。

「うん。今となっては自分でもよく分からないけど」

私はゆっくりと、モデルをやることになったいきさつを話し始めた。
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