あの頃のように笑いあえたら
パパが死んだこと、ママと話し合ったこと、その時の私の気持ち。

なんでかな、源ならちゃんと聞いてくれる……そんな気がした。

その間源は作業を止めて、優しい顔で私をまっすぐ見てくれていた。

大切なモノを見るような目で。

私はその純粋な心地よい空気感に素直に身を委ねる。

こんな話し、誰かにするのは初めてだ。

話しながら確かに感じた安らぎ。

固まっていた心の奥が、ゆっくりと溶けていくような感覚。


ああ、そうか ……私、誰かに聞いてもらいたかったんだ。


「……そっか。おまえもいろいろあるんだな」

ずっと黙って聞いていた源が口を開く。

なんてことのない言葉だけど、柔らかな声が心を暖かくする。

あの、ロケバスで私にかけてくれた優しい口調。

あの時もこんな優しい表情してたのかな、ちゃんと顔見たらよかったな。
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