あの頃のように笑いあえたら
「愛㮈も、そこでいい?」

「えっ?ああ、うん……」

当日行けなくなったって言えばいいかな。

「……いとな?どうした?なんかあった?」

咲苗が私の変化に気づいた。

「……ううん、大丈夫」

せっかく2人が乗り気になってるんだ。
私の事情で、また行き先を考え直すのは申し訳ない。

「いいから話しなよ、友達でしょ?」

ー ー友達……?

そうか、そうだよね。

きっと、この2人ならちゃんと受け止めてくれるだろう。

人との間に作ってしまう、分厚い壁を薄くする。それが今、私がしたいことだ。

その一歩を踏み出すチャンスを、2人がくれたんだ。

「ちょうど2年前に、パパが事故で死んだんだ……」

「えっ?」

思いのほか、重たい内容だったのだろう、2人ともどうしたらいいのか分からない表情だ。

「タマランドは、パパとの思い出の場所で…もうすぐ命日の今は、ちょっと行きたくない」

話し始めた私は、申し訳ない気持ちもあったが、もう止められなかった。

「そっか……ごめん。」

「え?ううん、こっちこそ。タマランド、みんなで行って来て!」

2人とも、ランチの手を止めて聞いてくれていた。

もう、それだけで十分だ。
< 47 / 231 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop