あの頃のように笑いあえたら
その日の学校帰り、私はある場所を訪れた。

ーー ガチャ

重たく、茶色いドアを開ける。

相変わらずシンプルな部屋、ここに来るのは約一年振りだ。

「あ、愛㮈ちゃん」

「こんにちは、ちょっと早かったかな」

受け付けのお姉さんも、相変わらずキレイだ。

「先生、もう少しかかると思うから、そこで待ってて」

「はーい」

受け付けのソファに腰掛ける。

お姉さんは優しいが、余計なおしゃべりはしない。


ここは、カウンセリングルーム。

カウンセリングを受けに来る人に、素人のおしゃべりは禁物だ。

少し懐かしい部屋を見渡す。
2年前、すがるような思いで私は初めてここへ来た。

パパが死んだショックで、一時的に声が出なくなってしまったのだ。

失声症って言うらしい。

その時私を救ってくれたのが、ここのカウンセラーである川本さんだった。
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