あの頃のように笑いあえたら
私が通う学校は、中学から大学まである私立校だ。

両親とも大学教授という家庭に生まれた私は、教育面でも経済面でも恵まれている環境で育った。

ただ、両親の仕事が忙しく寂しい思いもたくさんしたし、私の体調のこともあり兄弟はいない。

パパがいなくなった頃、ママはよく私にせめて兄弟がいたら……そう言って泣いていた。

確かに私に妹か弟がいたら、また少し違っていたかもしれない。

でも、どう違ったのか……。

実際いないものは想像するしかないが、私にとって守るべき人、頼れる人がいるのはいいことだと思う。

でも、悲しむのは私とママだけで、じゅうぶんだった。

今は、素直にそう思う。

パパが死んでから、これから2人で生きていくためにママとたくさん、たくさん話しをした。

私たちの、一歩を踏み出すために。

思春期真っ只中の私には、なかなかの試練だったが、今となってはちゃんと本音を話せてよかったと思う。

ママが働いていたおかげで、経済的には大きな問題はなさそうだった。

でもこれから何年も高い授業料を支払い学校へ行かせてもらうのは、中2の私でも気が引ける思いだった。
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