あの頃のように笑いあえたら
そんな時に思い立ったのが、モデルの仕事だった。
普通のバイトよりは、稼げるはずだ。

そもそも、中学生が普通のバイトをすることは難しいだろう。

当時、ママは反対した。

そんなことをしなくても、あなたを大学まで行かせてあげることくらいはできる……と。

もちろん、ママの気持ちは痛いほど分かっていた。

でも私は「何もしない」なんてできなかった。

お金のためだけじゃない、殻に閉じ込めてしまった自分を取り戻したかったんだ。

モデルの世界に興味があったワケではないが、ずっと他人と自分の間に作ってしまう壁を壊したい、何か違うことをすれば、何かが変わる……そう期待したのだ。

ママに気持ちの全てを伝えると、そっと私を抱きしめてくれた。

ママの気持ちと私の気持ちが通じあった瞬間だった。

そうして、私はずっと誘われ続けていたモデルの世界に足を踏み入れた。
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