あの頃のように笑いあえたら
「今行く〜!」

そうに答えて息を切らしながら登った高台からは、思わず息を飲むような景色が広がっていた。

キラキラと太陽の光を浴びて輝く海、遠くに小さく見える街並み。

そして視界の上半分を占める、青い空。

「うわぁ!すごい!」

思わぬ絶景に見とれていると、目の前にふと細く長い指が現れた。

見上げると、手の主は源だった。

ーー ドキッ!

「ほら、ここ上がったらよく見えるぞ」

自分がいる大きな岩の上から、私を見下ろしていた。

海と空の輝きでキラキラしている、その柔らかそうな黒髪に触れたい……そう思った。

源がくれた手に、私の手を重ねると伝わってきた暖かさ。

ーー ああ、私 この人が好きだ。

どこか懐かしいような温もりに、この時私は初めてはっきりとそう感じた。

岩の上に上がると、さっきは見えていなかった海を走るヨットが見えた。

少し視線を変えただけで、見えてなかった部分が見えてくる。

人間も、同じだ。

ずっと無愛想で無関心だと思っていた源は、ちょっと不器用なだけだった。

この6人で、源の隣りで見たこの景色、この空と海を、私はきっと忘れないだろう。

ねぇ、パパ。

ーー私は今、とても幸せです。
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