あの頃のように笑いあえたら
パパのお墓の前に立つ。

今年は笑顔でここに立ちたい、この1年ずっとそう思っていた。

会えない人を惜しんで泣くことは、もちろんその人を思ってのことだ。

でも、どうだろう。

パパは私が笑うと一緒に笑ってくれた。
もちろん今でもそうだと信じてる。

だからこそ、笑顔で。


パパの眠る場所には、パパの大好きな桜の木がたくさんある。

今の季節は、一面の新緑が目に眩しい。

大好きなはずの春の匂いが、なんだか今は切ない。

パパもきっと、季節の移り変わりを感じて楽しんでいるだろう。

お線香とお花、そしてパパの好きなビール。

丁寧に墓石を洗うママ。

あれから、私とママとの絆はより深まった。

思春期どころじゃなくなってしまった私はママを支え、最大のより所を失くしたママは私を支え。

お互いを支えることで、自分自身を保っていた。

パパが、私とママの距離をより一層縮めてくれたんだ。

そしていつものように、パパに話しかける。

ーー ねぇ、パパ。

私、好きな人ができたよ。
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